ワイは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の部長を除かなければならぬと決意した。

1 : 2021/11/10(水) 12:06:44.17 ID:quFrl2oDr
ワイには仕事がわからぬ。ワイは、只の営業である。ホラを吹き、パチ屋で遊んで暮して来た。
けれども残業に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明ワイは会社を出発し、野を越え山越え、三里はなれたこのマルハンの市にやって来た。

ワイには地位も、金も無い。女房も無い。無数の、内気なゴキブリと二人暮しだ。

2 : 2021/11/10(水) 12:06:59.84 ID:quFrl2oDr
弊社は、街の或る律気な一新卒を、近々、新入社員として迎える事になっていた。
入社式も間近かなのである。ワイは、それゆえ、新入社員の歓迎会やら新入社員の無根拠な輝きやらを避けに、はるばる市にやって来たのだ。
3 : 2021/11/10(水) 12:07:13.78 ID:quFrl2oDr
先ず、仕事だとホラを吹き、それから店内の大路をぶらぶら歩いた。ワイには竹馬の友があった。ユニコンティウス(319)である。
今は此のマルハンの市で、機械代の回収をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。
4 : 2021/11/10(水) 12:07:27.09 ID:quFrl2oDr
久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにワイは、ホールの様子を怪しく思った。ひっそりしている。
もう既に日も傾いて、そとの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、外のせいばかりでは無く、店内全体が、やけに寂しい。
5 : 2021/11/10(水) 12:07:34.70 ID:+KGPEkrVd
これな、走れメロスの改変なんやで!
6 : 2021/11/10(水) 12:07:43.40 ID:kkcRAbw8p
伸びなかったんだから諦めなよ
7 : 2021/11/10(水) 12:07:50.98 ID:quFrl2oDr
のんきなワイも、だんだん不安になって来た。路で逢った若い店員をつかまえて、何かあったのか、十日まえに此の市に来たときは、夜でも台が歌をうたって、店は賑やかであった筈だが、と質問した。
若い衆は、首を振って答えなかった。
8 : 2021/11/10(水) 12:08:07.20 ID:pFgdY9a2a
仕事が分からぬのは困るやろ…😰
9 : 2021/11/10(水) 12:08:07.61 ID:quFrl2oDr
しばらく歩いて老爺に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。
ワイは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。
10 : 2021/11/10(水) 12:08:23.14 ID:quFrl2oDr
「店長は、釘を殺します。」
「なぜ56すのだ。」
「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」
「たくさんの釘を殺したのか。」
「はい、はじめはCR機を。それから、ベルセルク無双を。それから、ユニコーンガンダムを。それから、ライトミドル機を。それから、準新台を。それから、最新台を。」
11 : 2021/11/10(水) 12:08:23.51 ID:5/nl1t1C0
ワイも職場の店長と一触即発や
13 : 2021/11/10(水) 12:08:39.00 ID:quFrl2oDr
「おどろいた。店長は乱心か。」
「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、店員の心をも、お疑いになり、少しく派手な出玉をしている台には、一層の釘締めを命じて居ります。
御命令を拒めば店員は会議にかけられて、詰められます。私事ですがきょうは、四人の諭吉が殺されました。」
14 : 2021/11/10(水) 12:08:53.19 ID:TUPmPDdj0
これすき
15 : 2021/11/10(水) 12:08:58.74 ID:quFrl2oDr
聞いて、ワイは激怒した。「呆れた店だ。こうしておれぬ。」
 ワイは、単純な男であった。仕事を、放ったままで、のそのそ営業車にもどって行った。
たちまち彼は、部長の着信履歴に捕縛された。調べられて、営業車のドラレコからはパチンコ店の映像が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。
17 : 2021/11/10(水) 12:09:02.49 ID:J5x4sPJXd
文豪やね
18 : 2021/11/10(水) 12:09:16.50 ID:quFrl2oDr
ワイは、部長の前に引き出された。
「このパチンコ店で何をするつもりであったか。言え!」暴君笹本は静かに、けれども威厳を以って問いつめた。その人の顔は色黒で、眉間の皺は、刻み込まれたように深かった。
「仮眠を。」とワイは悪びれずに答えた。
19 : 2021/11/10(水) 12:09:32.69 ID:quFrl2oDr
「おまえがか?」部長は、憫笑した。
「仕方の無いやつじゃ。おまえには、営業の仕事がわからぬ。」
「言うな!」とワイは、いきり立って反駁した。
「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。部長は、部下の忠誠をさえ疑って居られる。」
「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じては、ならぬ。」
暴君は落着いて呟き、ほっと溜息をついた。
「わしだって、平和を望んでいるのだが。」
20 : 2021/11/10(水) 12:09:33.66 ID:nXHJXqjyr
これ面白いのに完結してないの悲しい
21 : 2021/11/10(水) 12:09:46.47 ID:h523r8K9d
スレタイと本文1行目だけならまあまあよかった
22 : 2021/11/10(水) 12:09:47.72 ID:quFrl2oDr
「なんの為の平和だ。自分の地位を守る為か。」こんどはワイが嘲笑した。
「罪の無い人を叱りつけて、何が平和だ。」
「だまれ、無能。」笹本は、さっと顔を挙げて報いた。
「営業の口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、営業の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、懲戒免職になってから、泣いて詫びたって聞かぬぞ」
23 : 2021/11/10(水) 12:10:02.64 ID:quFrl2oDr
「ああ、部長は悧巧だ。自惚れているがよい。私は、ちゃんと働く覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」
と言いかけて、ワイは足もとに視線を落し瞬時ためらい、
「ただ、私に情をかけたいつもりなら、二日間の猶予を与えて下さい。たった一社の担当が、弊社の商品導入に乗り気なのです。二日のうちに、私は現場に見積もりを挙げさせ、必ず、契約を獲って来ます。」
24 : 2021/11/10(水) 12:10:17.81 ID:quFrl2oDr
「ばかな。」と笹本は、嗄れた声で低く笑った。
「とんでもない嘘を言うわい。逃がした無能が帰って来るというのか。」
「そうです。帰って来るのです。」ワイは必死で言い張った。
「私は約束を守ります。私を、二日間だけ許して下さい。取引先が、私の見積もりを待っているのだ。
そんなに私を信じられないならば、よろしい、私の取引先に河原木産業という企業がいます。私の無二の取引先だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。
私が失敗して、二日目の定時まで、ここに帰って来なかったら、あの取引先を誰かに差し上げます。たのむ、そうして下さい。
あと、同じ課の坂東も周辺のパチンコ店でよく見かけます。」
25 : 2021/11/10(水) 12:10:21.13 ID:pFgdY9a2a
もうあんま内容覚えてないからどれくらいパロディになっとるんかよく分からんな
26 : 2021/11/10(水) 12:10:25.67 ID:++s8+lclp
今日は完結させろ
27 : 2021/11/10(水) 12:10:30.17 ID:/XlkBanZ0
これ全部読めってこと?
28 : 2021/11/10(水) 12:10:38.69 ID:quFrl2oDr
それを聞いて笹本は、残虐な気持で、そっと北叟笑んだ。生意気なことを言うわい。どうせ契約出来ないにきまっている。
この嘘つきに騙された振りして、放してやるのも面白い。ついでに坂東とかいう男に、ワイから密告があったと伝えてやるのも気味がいい。
人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その坂東とかいう男を山口営業所送りに処してやるのだ。
世の中の、正直者とかいう営業にうんと見せつけてやりたいものさ。
29 : 2021/11/10(水) 12:10:57.45 ID:quFrl2oDr
「願いを、聞いた。その契約をとってくるがよい。二日目には定時までに帰って来い。おくれたら、その取引先とお前の首を、きっと貰うぞ。
ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪自体は、永遠にゆるしてやろうぞ。」
「なに、何をおっしゃる。」
「はは。私は会社が大事だから、おくれて来い。おまえの性根は、わかっているぞ。」
30 : 2021/11/10(水) 12:11:00.24 ID:uGFglxL60
外には、ただ、黒洞々たる夜があるばかりである。
ワイのゆくえは、誰も知らない。
31 : 2021/11/10(水) 12:11:15.51 ID:quFrl2oDr
ワイは口惜しく、地団駄踏んだ。ものも言いたくなくなった。
32 : 2021/11/10(水) 12:11:15.60 ID:wGV3rJ/40
最後まで貼れない定期
33 : 2021/11/10(水) 12:11:30.19 ID:9RErntiJd
仕事がわからぬちょっとすき
34 : 2021/11/10(水) 12:11:32.94 ID:mdILMcGtd
これ最初に作ったやつめちゃくちゃ暇だったんか
36 : 2021/11/10(水) 12:11:36.14 ID:quFrl2oDr
唯一の後輩、坂東ティウスは、外回り後、会議室に召された。暴君笹本の面前で、先輩と後輩は、数時間ぶりに相逢うた。
笹本は、坂東に一切の事情を語った。坂東ティウスは無言で慄き、ワイをぎろと睨みつけた。後輩なんかは、それでよかった。
坂東は、こっぴどく締め上げられた。ワイは、すぐに出発した。
キコーナ、満天のネオンである。
37 : 2021/11/10(水) 12:11:52.84 ID:quFrl2oDr
ワイはその夜、一勝もせず五里の帰路を急ぎに急いで眠りについた。
会社へ到着したのは、翌日の午前、陽は既に高く昇って、同僚たちは野に出て仕事をはじめていた。
ワイの直属の上司も、きょうは事務所で何か作業をしていた。颯爽と歩いて来るワイの姿を見つけて驚いた。
そうして、うるさくワイに罵声を浴びせた。

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