久しぶりに実家に帰省したら父親がネトウヨになっていた…。ネット上でよく見るエピソードだよな

　過去十数年で最も量産された「亜インテリ」は「ネット右翼」である。
久しぶりに実家に帰省したら、父親がネトウヨになっていた――インターネットでよくみられるエピソードだ。

たしかにネット右翼の言説には「亜インテリ」を量産しやすい特徴がある。
ネット右翼が誕生した背景には1990年代のディベートブームがある*7
。
相手を打ち負かすべき「敵」とみなして論破するディベートは「部族主義」と相性が良い。
しかも、論破すべき「敵」は、「反日」や「サヨク」といった彼らの「ナショナリズム」にとっての「敵」なのである。

「亜インテリ」を量産しやすいもうひとつの特徴が「論破のマニュアル化」である。
「従軍慰安婦」や「南京大虐殺」といった歴史問題がよく話題になるが、ネット右翼はあまり歴史に興味がない。
むしろ「敵への憎悪がまず存在し、バッシングを正当化する材料として歴史があとから利用された」という*8
。
そのために「こうきたらこう返す」という「論破のマニュアル化」がなされた*9
。　
当たり前だが、歴史を研究するよりも、「論破のマニュアル」 を勉強するほうが簡単である。
ネット右翼はデモやネットでいつでも披露できるように「論破のマニュアル」を「直観システム」のレベルにまで叩き込む。
そして、「受け売り」の知識を「バカのひとつ覚え」のように繰り返すのである。
「亜インテリ」たちが勉強の成果を披露すれば、ネット右翼的な言説は拡散されて、また新しい「亜インテリ」が生み出されていく。

とはいえ、興味深いのは、ネット右翼が生まれた背景には「亜インテリ」への批判があったことだ。
思想家の浅羽通明や民俗学者の大月隆寛らは戦後民主主義を肯定する言説がワンパターン化(マニュアル化)したことに苛立っていた。
たとえば、浅羽は湾岸戦争に反対する新聞投書を「インテリ気取りたちの愚論」と批判している*10
。戦後民主主義について「バカのひとつ覚え」のように繰り返す「知識人」や「亜インテリ」を批判する彼らが依拠したのは「大衆」であり、『ゴーマニズム宣言』を連載していた漫画家の小林よしのりである。
社会学者の伊藤昌亮が指摘するように、浅羽通明、大月隆寛、小林よしのりらは「庶民的・常民的な生のリアリティという観点」から「市民という概念そのものに疑義を突き付けてい」ったが、「大衆」からの戦後民主主義批判は「右旋回」していくことになる*11
。
『新ゴーマニズム宣言スペシャル 戦争論』(幻冬舎、1998年)はベストセラーとなる。
いっぽうで大月隆寛は「地に足つかない「朝日」批判、「サヨク」叩きに熱狂し、まるでゲームのようなノリで知ったかぶりの歴史観論争に没頭する醜態もそこここで見られ始めている」と記して『戦争論』読者の「亜インテリ」化に気づいていた。
そして小林よしのりに対して、薬害エイズ運動に参加した学生に「渾身の冷水を浴びせかけて日常に戻そうとした」ように「責任あるカウンターパンチを食らわせる」ことを求めていた*12
。
しかし、「亜インテリ」への批判は別の「亜インテリ」の量産に行きつく結果となった。

https://news.yahoo.co.jp/articles/dfeea8ce2434c42d4d96c3b4e452e7a20a44e929?page=2

これが大雑把な流れだお