「何者かになりたい人々」「ネトウヨ」が、ビジネスと政治の「食い物」にされまくっている悲しい現実

こうした願いや悩みは、人々のアイデンティティが定まりづらい時代ならではのものだ。たとえば江戸時代の武士や農民は、身分やイエによって「何者か」になるか決まっていたから、こうした願いや悩みとは無縁だった。

正反対に、90～00年代にかけては、こうした願いや悩みが時代の気分となり、いわゆる「サブカルチャー」の通奏低音となっていた。

“一億総中流”の幻想が遠ざかり、生まれた家庭や地域による格差が取り沙汰される昨今は、こうした「何者問題」は沈静化したとみている人もいるかもしれない。だが実際には現在も「何者問題」は存在していて、スマホやSNSが普及した時代ならではの悲喜劇を生んでいる。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/84045
この文章では、そうした2020年代ならではの「何者問題」について、ビジネスや政治の現象と照らし合わせながら紹介する。

SNSが普及する少し前から、日本では「ネトウヨ」が増えているといわれてきた。「ネトウヨ」という言葉には旧来の右翼とは似て非なる存在であるという含意があるが、実際「ネトウヨ」と呼ばれる人々──たとえばツイッターアイコンの片隅に日の丸を掲げるような──の多くは、政治運動をしている自覚に乏しい。とにもかくにも彼ら・彼女らは仲間内で「いいね」を贈りあい、「リツイート」を使いながらの付和雷同に終始している。

「ネトウヨ」と呼ばれる人々のそうした活動が、実際に本人の政治的利益に繋がるとは考えにくい。だが、思想信条や日の丸のアイコンをとおして付和雷同しているうちは、自分が「何者か」になったような気持ちにはなれるし、活動をとおして、少なくとも日本人としてのアイデンティティは自覚できる。

このような、いわばカジュアルな「ネトウヨ」は、「何者問題」を一時的に充足するために活動し、群れているのであって、動機の点において生粋の主義者とは異なっていると考えらえる。