高市政権の経済・財政運営に絡み、「高圧経済論」という言葉もよく聞くようになりました。どのようなものなのでしょうか。
一般的に、経済は好景気と不景気のサイクルを繰り返しながら成長します。高圧経済論では、経済の基調的な成長力(潜在成長率)を大きく上向かせるため、マクロ経済における需要超過の状態(景気の過熱状態)をつくり続ける必要があると説いています。以下が、景気循環を伴う一般的な経済成長と高圧経済論のもとでの経済成長の概念図です。
高圧経済論に関しては、これまで日本ではあまりなじみがありませんでしたが、米国ではジャネット・イエレン氏がFRB(米連邦準備制度理事会)の議長だった2010年代半ばから後半にかけて話題になりました。当時の米国経済は大規模な量的金融緩和策を行ったにもかかわらずインフレ率が思うように上がらなかったため、こうした考えが広がりました。それが時と場所を変え、高市政権で志向されることになりました。
「最適な経済対策規模」を特定するのは非常に困難です。その時々で政権が直面する経済的な課題は違いますし、課題ごとに必要な予算規模が変わるからです。ただし、高市政権肝いりの会議体である日本成長戦略会議などの資料から、高圧経済論をベースにした「(積極財政派が念頭に置いているであろう)経済対策の規模感」はある程度推測できます。
以下のグラフを見ると、日本経済がデフレに陥った1990年代後半以降、企業貯蓄率がプラス(グラフ中では下方向)になり続けていることが分かります。企業が設備投資等を抑制しているために、「カネ余り」になっているということです。日本成長戦略会議には、この企業貯蓄率のマイナス転換(グラフ中では上方向)を目指す向きがあるようです。この場合、需給ギャップを2%程度まで引き上げる(=経済を2%分だけ需要超過の状態にする)必要があるわけですね。
しかし、日本成長戦略会議メンバーの意見なども踏まえると、本当に目指している需給ギャップの水準はバブル経済に突入する前の安定期だった1980~1985年ごろの4%前後と見られます。その水準に近づけるために必要な財政支出は、25兆円前後と計算できます。
需給ギャップを4%程度に引き上げることは、非常に大胆な政策目標です。しかし、高圧経済論の論者は更なる財政拡張を目指すかもしれません。というのも、需給ギャップを4%まで引き上げることは、どちらかと言えば需要補填策としての意味合いが強く、必ずしも経済の供給力強化には十分でない可能性があるからです。
AIや半導体、造船、レアアース開発といった戦略投資分野は、その供給力が発現するのに時間を要する面もあります。供給力強化も全面的に押し出される場合、経済対策に伴う最終的な財政支出は30兆円に近づく可能性もあります。
トリプル安の背景に財政拡大への不安 高市政権の「高圧経済論」とは? 野村證券・岡崎康平 | NOMURA ウェルスタイル – 野村の投資&マネーライフ11月18日の東京市場では日経平均株価が大幅に下落したほか、長期金利が上昇(価格は下落)、米ドル円相場も円安・ドル高が進むなど「トリプル安」に見舞われました。日経平均株価は19日も小幅に値下がりして取引を終えました。野村證券チーフ・マーケット・エコノミストの岡崎康平は、背景のひとつとして「高市早苗政権は本当に積極財政ス...www.nomura.co.jp
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