- ワイには仕事がわからぬ。ワイは、只の営業である。ホラを吹き、パチ屋で遊んで暮して来た。
けれども残業に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明ワイは会社を出発し、野を越え山越え、三里はなれたこのマルハンの市にやって来た。
ワイには地位も、金も無い。女房も無い。無数の、内気なゴキブリと二人暮しだ。 - 期待
- 弊社は、街の或る律気な一新卒を、近々、新入社員として迎える事になっていた。
入社式も間近かなのである。ワイは、それゆえ、新入社員の歓迎会やら新入社員の無根拠な輝きやらを避けに、はるばる市にやって来たのだ。 - 草
- 今回こそ最後までやれよ
- 先ず、仕事だとホラを吹き、それから店内の大路をぶらぶら歩いた。ワイには竹馬の友があった。ギアヌンティウス（319）である。
今は此のマルハンの市で、機械代の回収をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。 - 久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにワイは、ホールの様子を怪しく思った。ひっそりしている。
もう既に日も傾いて、そとの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、外のせいばかりでは無く、店内全体が、やけに寂しい。 - のんきなワイも、だんだん不安になって来た。路で逢った若い店員をつかまえて、何かあったのか、十日まえに此の市に来たときは、夜でも台が歌をうたって、店は賑やかであった筈だが、と質問した。
若い衆は、首を振って答えなかった。 - ええやん
- しばらく歩いて老爺に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。
ワイは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。 - 「店長は、釘を殺します。」
「なぜ56すのだ。」
「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」
「たくさんの釘を殺したのか。」
「はい、はじめはダンバインを。それから、残るCR機を。それから、大工の源さんを。それから、物語セカンドシーズンを。それから、準新台を。それから、最新台を。」 - 「おどろいた。店長は乱心か。」
「いいえ、乱心ではございませぬ。客を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、店員の心をも、お疑いになり、少しく派手な出玉をしている台には、一層の釘締めを命じて居ります。
御命令を拒めば店長は会議にかけられて、トバされます。私事ですがきょうは、四人の諭吉が殺されました。」 - 続けろ
- がんばれ
- 聞いて、ワイは激怒した。「呆れた店だ。こうしておれぬ。」
ワイは、単純な男であった。仕事を、放ったままで、のそのそ営業車にもどって行った。
たちまち彼は、部長の着信履歴に捕縛された。調べられて、営業車のドラレコからは映像が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。 - >>15
草 - >>15
よしよし - >>15
店長が釘をキツくしてる件関係なくて草 - 次途中でやめたら切れるからな
- センスある
- 店長のくだりすっとばしていこうや
- このスレ見るのも3回目やな
今日は完結させてくれや - ええぞ頑張れ
- 落ちたな
- あくしろ
- ほし
- やめんなや！！！
- おーい😡
- やめるの早すぎやろ
- あれ？
- は？
- はよしろ定期
- ワイは、部長の前に引き出された。
「このパチンコ店で何をするつもりであったか。言え！」暴君笹本は静かに、けれども威厳を以って問いつめた。その人の顔は色黒で、眉間の皺は、刻み込まれたように深かった。
「仮眠を。」とワイは悪びれずに答えた。 - よし
- 「なんの為の平和だ。自分の地位を守る為か。」こんどはワイが嘲笑した。
「罪の無い人を叱りつけて、何が平和だ。」
「だまれ、無能。」笹本は、さっと顔を挙げて報いた。
「営業の口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、営業の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、懲戒解雇になってから、泣いて詫びたって聞かぬぞ」 - >>39
笹本って誰だよ - 「ああ、部長は悧巧だ。自惚れているがよい。私は、ちゃんと働く覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」
と言いかけて、ワイは足もとに視線を落し瞬時ためらい、
「ただ、私に情をかけたいつもりなら、明日までに三日間の猶予を与えて下さい。たった一社の担当が、弊社の商品導入に乗り気なのです。三日のうちに、私は現場に見積もりを挙げさせ、必ず、契約を獲って来ます。」 - えらいぞ
- 途中で終わった定期
- なんか始まった
- それを聞いて笹本は、残虐な気持で、そっと北叟笑んだ。生意気なことを言うわい。どうせ契約出来ないにきまっている。
この嘘つきに騙された振りして、放してやるのも面白い。ついでに坂東とかいう男に、ワイから密告があったと伝えてやるのも気味がいい。
人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その坂東とかいう男を山口営業所送りに処してやるのだ。
世の中の、正直者とかいう営業にうんと見せつけてやりたいものさ。 - 坂東定期
- ちゃんと書きためたか？
- 「願いを、聞いた。その契約をとってくるがよい。三日目には定時までに帰って来い。おくれたら、その取引先とお前の首を、きっと貰うぞ。
ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪自体は、永遠にゆるしてやろうぞ。」
「なに、何をおっしゃる。」
「はは。私は会社が大事だから、おくれて来い。おまえの性根は、わかっているぞ。」ワイは口惜しく、地団駄踏んだ。ものも言いたくなくなった。
- 唯一の後輩、坂東ティウスは、外回り後、会議室に召された。暴君笹本の面前で、先輩と後輩は、数時間ぶりで相逢うた。
笹本は、坂東に一切の事情を語った。坂東ティウスは無言で慄き、ワイをぎろと睨みつけた。後輩なんかは、それでよかった。
坂東は、こっぴどく締め上げられた。ワイは、すぐに出発した。
キコーナ、満天のネオンである。 - ワイはその夜、一勝もせず五里の帰路を急ぎに急いで眠りについた。
会社へ到着したのは、翌日の午前、陽は既に高く昇って、同僚たちは野に出て仕事をはじめていた。
ワイの直属の上司も、きょうは事務所で何か作業をしていた。颯爽と歩いて来るワイの姿を見つけて驚いた。
そうして、うるさくワイに罵声を浴びせた。 - 「朝イチに呼ばれてまして。」ワイは無理に取り繕おうと努めた。
「先方に用事を残して来た。またすぐ先方に行かなければならぬ。あす、先月の領収書を纏めて挙げる。早いほうがよかろう。」
課長は顔をあからめた。 - 暴君笹本最低だな、許せねぇわ
- 「うれしいか。この前のヘコませたバンパーも直して来た。さあ、これから行って、経理たちに知らせて来い。私の先月分領収書は、あすだと。」
ワイは、また、颯爽と歩き出し、席へ帰って見積もりファイルを開き、数字を入れたり消したりし、間もなく机に倒れ伏し、呼吸もせぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。 - 眼が覚めたのは昼だった。ワイは起きてすぐ、取引先を訪れた。そうして、少し事情があるから、契約を明日にしてくれ、と頼んだ。
先方は驚き、それはいけない、こちらには未だ何の書類も来ていない、せめて見積もりは出してくれ、と答えた。
ワイは、待つことは出来ぬ、どうか明日にしてくれ給え、と更に押してたのんだ。
先方も頑強であった。なかなか承諾してくれない。夕暮れまで議論をつづけて、やっと、どうにか先方をなだめ、すかしたが、説き伏せられた。 - 結局契約は、白紙になった。ワイの、先方への謝罪が済んでしばらく、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。
パチンコに着席していたワイは、何か不吉なものを感じたが、それでも、演出で気持を引きたて、狭いホールの中で、ずるずるハマるのも怺え、陽気に鼻歌をうたい、手を捻った。 - >>56
草 - 結構いけるやん
- 牙狼も、満面に金色を湛え、しばらくは、笹本とのあの約束をさえ忘れていた。
演出は、遊タイム到達直前に入っていよいよ乱れ華やかになり、ワイは、外の豪雨を全く気にしなくなった。 - ワイは、一生このままここにいたい、と思った。この佳い台たちと生涯暮して行きたいと願ったが、いまは、社畜のからだで、自分のものでは無い。ままならぬ事である。
しかしワイは、わが身に鞭打ち、ついに天井まで追うことを決意した。 - 坂東ティウスかわいそう
- うーんこの
- あさっての定時までには、まだ十分の時が在る。ちょっと一眠りして、それからすぐに言い訳を考えよう、と考えた。その頃には、怒りも小ぶりになっていよう。少しでも永くこの環境に愚図愚図とどまっていたかった。
ワイほどの男にも、やはり未練の情というものは在る。 - >>1
無数なのに二人とは - 坂東は、話途中で電話を切った。ワイは、それからスマホの画面をたたいて、
『遠隔操作当たり前の糞ボッタホール。無双のシマでも、出ているのは、サクラと軍団だけだ。他には、何も無い。
全部ベタピン鬼釘。もう一つ先の、キコーナに行ったほうがマシ。』★☆☆☆☆
牙狼は遊タイム直前にして、当たっていた。
ワイは笑って監視カメラたちにも会釈して、ホールから立ち去り、兎小屋にもぐり込んで、死んだように深く眠った。 - 眼が覚めたのは翌る日の始業の頃である。ワイは跳ね起き、南無三、寝過したか、いや、まだまだ大丈夫、これからすぐに出発すれば、昼休みの刻限までには十分間に合う。
明日は是非とも、あの暴君に、ワイの処世術を見せてやろう。そうして笑って会社の足元にしがみついてやる。ワイは、悠々と身仕度をはじめた。 - おそらく怒りも、いくぶん小ぶりになっている頃合いである。身仕度は出来た。
さて、ワイは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、亀の如く走り出た。 - ワイは、明日、怒られる。怒られる為に出社するのだ。身代りの後輩を弔う為に出社するのだ。
暴君の奸佞邪智を打ち破る為に出社するのだ。弁明しなければならぬ。そうして、ワイは許される。 - >>71
許されねえよ - 激怒してるのパチ屋の店長やんけ
- パチンコやらんのやが釘を56すってどういうことや
- 若い時からの居場所を守れ。さらば、坂東。若い左遷は、つらかった。
幾度か、吹き出しそうになった。えい、えいと大声挙げて自身を叱りながら歩いた。 - 弁明の余地なくて草
- 家を出て、ビルを横切り、高架をくぐり抜け、会社近くに着いた頃には、雨も止やみ、日は高く昇って、そろそろ暑くなって来た。
メロスは額の汗をこぶしで払い、ここまで来れば大丈夫、もはや坂東への未練は無い。 - 坂東は、きっと佳い営業になるだろう。ワイには、いま、なんの気がかりも無い筈だ。
まっすぐに会社に行き着けば、それでよいのだ。そんなに急ぐ必要も無い。ゆっくり歩こう、と持ちまえの呑気を取り返し、好きな小歌をいい声で歌い出した。 - メロスって誰だよ
- ぶらぶら歩いて二里行き三里行き、そろそろ全里程の半ばに到達した頃、降って湧いた災難、ワイの足は、はたと、とまった。見よ、前方のホールを。
- 落とすな
- 納期に間に合いませんでした
終わりです 誠に申し訳ありません - >>83
は？ - >>83
これは仕事がわからぬ男 - >>83
翌営朝一までな - >>83
お前何回やらかせば分かるの？ - 今度こそ完結させろ
- 保守
- これって完結したの？
- 打ち切りエンドみたいだったから続き見れるならうれしい
- またかよ
- 坂東ティウス
・クソみたいな先輩のせいでサボりを覚えてしまう
・その先輩に売られる
・山口営業所に栄転ほんまかわいそう
- え？
- 前回から進んでないやん
- やっぱ太宰の文章はええな
- これイッチただのコピペやろくたばれ
ワイは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の部長を除かなければならぬと決意した。
なんJ
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